昨年12月に発表された2023年税制大綱において、インボイス制度に関する経過措置が発表されました。
(1)納付税額は売上にかかる消費税額の2割(2割特例)
これまでインボイス制度の導入にあたっては、免税事業者であった事業者が、適格請求書発行事業者となることで、消費税の負担が増えるという懸念が認識されてきました。そこに、今回の税制大綱では、「適格請求書発行事業者となる小規模事業者にかかる税額控除に関する経過措置」という項目が設けられました。
今回発表された経過措置によって、課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準学に対する消費税額の2割とすることができることとなりました。
具体例で考えてみましょう。税込売上高990万円の小規模事業者があるとします。消費税率は一律10%であるものと仮定します。
売上税額・・・90万円(990万円の10%/110%)
控除消費税額・・・上記90万円の80%となり72万円です。
納付税額・・・両者の差額として18万円(90万円-72万円)
納付税額は、売上税額の2割となることがわかります。売上に対してはその金額の1.8%となり、納税額の算出が簡単にできるメリットがあります。
それでは、売上高が5000万円以下の場合に適用できる簡易課税制度との比較をどのように考えたら良いのでしょうか。
簡易課税制度においては、業種によってみなし仕入税率が異なります。
第1種 90%
第2種 80%
第3種 70%
第4種 60%
第5種 50%
第6種 40%
2割特例においては、仕入の業種区分が不要で、事前届出が不要です。したがって、簡易課税よりも事務負担が軽いと考えられます。また、簡易課税制度の届出をしていれば、2割特例とのいずれかを確定申告時に選択することができます。
みなし仕入税率が90%となる第1種卸売業がない事業者にとっては2割特例を選択することが一番有利になりそうです。
(2)1万円未満の経費に関する特例
売上高1億円以下の事業者が、国内において行う課税仕入について、1万円未満の取引については、一定の事項が記載された帳簿のみを保存することにより、仕入税額控除を認めることとなりました。
これまで、1万円未満の取引を行う取引先がインボイスを発行しない場合仕入税額控除ができなくなるのではないかという懸念がありました。飲食店における飲食代、小規模事業者から購入した消耗品などが該当すると想定されます。