一般的に、会計には3つの機能があるといわれており財務会計、税務会計、管理会計がその3つとされています。
- 財務会計は、経営者が債権者や出資者に対する説明責任を果たすため
- 税務会計は、経営者が税務署に対して納税義務を果たすため
- 管理会計は、経営者が自社内において経営管理目的を果たすため
- それぞれ必要な会計の形式であるということができます。
このうち、会計ソフトは一般的には、正確な納税に資することが期待されていると考えられますが、管理会計の実現にも資することをご存知ですか。
例えば、ある会社の次のような税務会計上の損益計算書があるとします。
売上 | 1,000 |
---|---|
売上原価 | 500 |
営業利益 | 500 |
販管費 | 300 |
税前利益 | 200 |
税務会計上は、税金計算が正確にできることを目的としていますから、税前利益200円の算出過程が正しければ問題ないと考えられます。
一方で、この会社が社内に事業部門Aと事業部門Bを抱えていると仮定して、事業部門ごとの収支を見ようとした場合には、その管理目的を達成する情報が足りません。
例えば、事業部門Aと事業部門Bはそれぞれ下記のような売上と経費の実態を有しているとしましょう。
部門A | 部門B | 全社合計 | |
---|---|---|---|
売上 | 700 | 300 | 1,000 |
売上原価 | 300 | 200 | 500 |
営業利益 | 400 | 100 | 500 |
販管費 | 170 | 130 | 300 |
税前利益 | 230 | ▲30 | 200 |
税務会計上の目的で全社データでしか見えていなかった損益計算書を、部門ごとの成績把握もできるようにするためには、それぞれの項目を事業部門別に分けて記録することが必要です。
一度上記のような実態としての部門別損益が明らかになったことによって、その部門別損益計算書からは例えばどのようなことが読み取れるでしょうか。
この例では、全社合計の数値では判明していなかったものの、部門別管理を導入したことによって、部門Bが出している赤字を、部門Aが補っていることがわかります。
会計ソフトでできること
通常、会計ソフトを使うと、このような部門分けが簡単にできます。
具体的は、入力前に補助部門として部門を設定しておき、入力段階においていずれの部門に関わる数値なのかを仕訳上に記録します。
全社合計でしか把握していなかった収益を部門別に把握した場合を、把握前と把握後で比較してみましょう。
(全社管理)全社で実現した売上の合計額を計上
現金預金 1,000円/売上 1,000円
↓
(部門別管理)部門ごとに実現した売上をそれぞれ計上
現金預金 1,000円 /売上(部門A) 700円
/売上(部門B) 300円
上記のような部門ごとの設定を経費についても行います。
全社合計でしか把握していなかった発生費用を部門別に把握した場合と比較してみましょう。
(全社管理)会社における発生費用の合計額を計上
経費 500円/現金預金 500円
↓
(部門別管理)部門ごとの発生費用をそれぞれ計上
経費(部門A)300円/ 現金預金 500円
経費(部門B)200円/
このように、収益と費用を、それぞれの発生した部門に紐つけることによって、理論的には部門ごとの損益計算書を得ることができます。
せっかくの利用料金を払っている会計ソフト。その価値をあなたの会社では十二分に引き出せていますか?ただ仕訳を入力して試算表を作成するだけではない使い方もあることを参考にしていただければ幸いです。