厚生労働省が制度設計案を公開したいわゆるデジタル給与払い。スマートフォンアプリや電子マネーでの給与振込が可能となった場合に、企業と労働者にはどのようなメリットやデメリットが生まれるのでしょうか。
今後の導入が不可避と予想される分野だけに、デジタル給与払いについての対応を考えてみましょう。
デジタル給与払いのメリット
資金決済業者の口座への送金は、送金手数料が安くて済む傾向にあります。企業にとっては、毎月の送金コストを抑えることができます。
送金コストが抑えられることによって、給与の週払いや日払いといった送金が手軽に行えるようになる可能性があります。週払いへの移行により労働者確保の流動性が高まる可能性も考えられます。
労働者にとっては、電子マネーで給与を受け取れば、従来のように銀行口座からキャッシュレス口座へチャージする手間が省けます。それだけでなく、受け取り口座にひもづくポイントやキャッシュバックなどの恩恵を受けられることが予想されます。企業にとっても福利厚生の一環としてデジタル給与払いをあたりまえのように取り入れる時代がくるかもしれません。
デジタル給与払いのデメリット
もちろん、メリットだけでなく、デメリットも考えられます。そもそもスマートフォンやアプリをつかえない方についてはいわゆるデジタルディバイドという問題が生じてくるかもしれません。
さらには、デジタル給与払いの担い手となる資金決済業者が破綻した場合に、口座の補償や利用者の保護はどのようになるのかという疑問が生まれます。
また不正送金や不正利用があった場合の対応についても制度上想定しておく必要があるでしょう。
それらの課題を解決できるようなシステム投資が必要となった場合に、企業が導入をためらうような場面もでてくるかもしれません。
企業経営者にとっては、給与のデジタル払いという新たな制度設計がどのような方向ですすんでいくのか、無関心ではいられない時代にあるといえます。