経理アウトソーシング(外注)のメリットとデメリット比較
会社の経理業務の一部またはすべてを代行してくれる経理アウトソーシング。
2022年現在、人材不足や人件費カットなどを理由に、経理業務をアウトソーシングする会社は増えてきています。
経理のアウトソーシング化は、経理業務をスピーディーかつ正確に行うことができ、人材不足やコストなどの問題解決につながるのがメリットです。
一方、自社にノウハウが残らず社員育成ができなかったり、セキュリティ面でリスクがあったりと、デメリットもあります。
経理アウトソーシングを成功させるためには、メリット・デメリットを理解したうえで、自社に合った外部委託会社を探すことが大切なのです。
日本の経理アウトソーシングの現状
会社のお金の流れを管理し、可視化する経理業務。
具体的には、従業員への給料や保険の管理、税金の計算、売上や仕入れの管理など、さまざまな仕事があり、会社にとってなくてはならない業務です。
2022年の日本は、人材不足や労働契約法改正、働き方改革の推進など、会社に影響を与える事柄が多くあり、特に中小企業の人手不足が深刻化しているといわれています。
会社の経理部でも人材不足などの問題を抱えており、解決策として注目されているのが経理業務のアウトソーシングです。
経理業務のアウトソーシングのポイントと注意点、BPO(Business Process Outsourcing)の考え方について
BPO(Business Process Outsourcing)とは、経理や人事など企業内で行っていた業務の一部を、一括して外部委託会社にお願いすることです。
BPOビジネスは年々市場を拡大しており、今後もさらに発展していくと予想されています。中でも経理は、マニュアル化された定型業務が多いため、経理代行サービスを利用しやすい業務といえるでしょう。
外部委託会社によってできる業務が違うため、委託する業務を確定してから委託先を探すとスムーズに進めることができます。
BPOを活用する際は、どの業務を自社で行い、どの業務を外部委託するか見極めることがとても重要です。
BPOを行うときは、業務をコア業務とノンコア業務に分け、さらに企業としての強みがあるかどうかを精査します。ノンコア業務かつ強みを持たないと判断した業務から、BPOを始めると良いでしょう。
企業において経理業務は、ノンコア業務で強みがないと判断される場合が多いため、経理アウトソーシングサービスを利用する会社が増えてきているのです。
経理アウトソーシングのメリット
スピーディーで正確、滞りがなく、ITの活用などによる業務の最適化を期待できる
経理はスピーディーさと正確さが大切な業務です。また、給料や仕入れ先への支払いなど、滞りなく行われることも重要なポイントです。
しかし、自社で仕事が早く正確な経理のプロを育てるのには時間がかかり、退職の際には引継ぎをきちんと行わないと業務に支障がでてしまいます。
経理外注を利用すれば、仕事を行うのは外注先の経理のプロです。ミスの軽減やITを駆使した業務の最適化、法改正に対する迅速な対応などが期待できます。また、経理のプロとしてのアドバイスを受けることも可能でしょう。
不正の抑止・減少
経理は会社のお金を管理するため、不正が起きないとも限りません。経理担当者が自分の口座にお金を振り込んだり、発注書を偽造したりといったニュースを見たことがある人も多いでしょう。
自社で経理を行う場合、管理者が目を光らせていないと着服や改ざんができてしまうため、不正のリスクには十分備えないといけません。
経理アウトソーシングを行うことで、社内経理の中に第三者の目を入れることができ、不正防止や早期発見につながるというメリットがあります。
例えば、帳簿の作成を外部委託している場合、不可解な送金があっても速やかに発見できる可能性が高いのです。
人手不足の解消、経理担当がいなくなるリスクや経理担当の属人化から脱却
経理にはさまざまな業務内容があるため、自社で経理業務を行うとなると、どうしても人員を割く必要があります。
さらに、会社のお金を管理する経理は、人員が足りないからといって削減できる業務でもありません。
経理をアウトソーシングすることは、人員不足の解消につながります。また、経理担当者がいなくなるリスクやその業務はその人にしかわからないといった属人化からも脱却することができます。
経理業務を他社が代行することで、経理担当の急な退職や休暇で引き継ぎができておらず業務が立ち行かないという事態が防げるのです。
人件費などの内部コスト削減に貢献する
会社を経営するうえで、人件費は大きなコストです。経理担当者の給料や保険などの見えるコストはもちろんのこと、採用のための費用や教育するための人材や時間など見えないコストも大きくかかっています。
経理アウトソーシングでも、もちろん委託料というコストが発生しますが、人件費と採用や教育に関する費用はカットが可能です。
経理業務を委託後は、経理担当者の退職や引き継ぎ、新人の教育などを考える必要がなくなるため、内部コストとさまざまな手間の削減が叶うというメリットがあります。
売上につながる本業・コア業務に集中・専念できる
前述した通り、会社の業務はコア業務とノンコア業務に分かれており、給与計算や決算処理などを行う経理はノンコア業務といえます。
ノンコア業務はBPO化しやすく、経理アウトソーシングは、人材不足の解決につながり、人件費などの内部コストを削減できるとお話しました。
削減した経理の人材とコストは、企業の主軸となっているコア業務に投入できます。
強みである業務に集中・専念することは、会社の成長につながり、収益アップにも貢献できる可能性を秘めているのです。
経理アウトソーシングのデメリット
社員育成ができない、経理業務に会社の理念や方向性が反映されない
経理アウトソーシングを行うと、当然ながら自社の経理担当社員を育成することは難しくなります。また、他社に会社の理念や方向性を反映することも難しいといえるでしょう。
自社の経理担当者が退職する際は、次の担当者に引き継ぎと教育をすればすみますが、経理アウトソーシングを止めるとき、経理委託会社は自社経理担当者の教育は行いません。
そうなると、経理アウトソーシングを止めたら、経理業務の早さや正確さなどのクオリティが下がったという状況になるかもしれません。
経理業務を委託した場合でも、担当者に丸投げするのではなく、マニュアルに見直しや作業の確認を行うことで、知識を蓄えていくことでリスクヘッジを行うと良いでしょう。
情報の外部流出の心配、セキュリティ面の心配、情報漏れのリスク
経理アウトソーシングと聞くと、セキュリティ面が心配な人も多いかもしれません。
自社で経理を行う場合でも情報漏洩などのリスクはありますが、委託するとなると外部の会社に自社の大切な情報を渡すことになるので、よりリスクは上がるといえます。
データを渡すときや戻すときの失態や委託先の担当者の不備など、情報漏洩のリスクにはより気をつけなければなりません。
このデメリットを解決するためには、経理アウトソーシング先をよく厳選することが大切です。しっかりとしたセキュリティ対策を行っている企業を選び、さらに情報管理の徹底を教育するようにしましょう。
人的コストが余計にかかり、料金が割高になるケースがある、他の業務を任せにくい
どの経理アウトソーシング会社を選ぶか、またどこまでの仕事をお願いするかによっても変わってきますが、時として人的コストが余計にかかり、料金が割高になる場合があります。
経理アウトソーシングは、任せる仕事が多ければ多いほど料金が上がる従量課金制を採用している会社がほとんどです。
さまざまな業務オプションがあるため、幅広い企業のニーズに対応してくれる一方で、契約にない他の業務は任せにくい・頼れないという一面もあります。
そして、任せる仕事量によっては、社内で経理業務を行うよりも割高になってしまう場合もあるので、どちらがお得なるのか、きちんと計算してからアウトソーシング化することが大切です。
経費処理が重複の可能性がある
経理業務をすべてアウトソーシング化する場合は問題ありませんが、経理業務の一部を委託する場合は注意が必要です。
自社と委託先でする業務をきちんと分担をしておかないと、経理処理が重複するという事態が起こる可能性があります。
経理処理の重複を起こさないためには、経理アウトソーシング先ときちんと話し合い、自社で行う業務とアウトソーシングする業務を明確化することが大切です。
話し合うことで専門家としての意見を聞くことができるので、いくつかの会社に相談してみると良いでしょう。
担当者との相性の問題、自社にあった雰囲気の人を選びにくい
経理アウトソーシング先の担当者とは、データのやり取りや進捗報告など、やり取りを行う場面が多くあります。
そこで重要になってくるのが、アウトソーシング先の担当者と自社との相性の問題です。数ある経理アウトソーシング先から、自社に合った雰囲気の人を見つけるのは至難の業かもしれません。
自社に合う人を見つけるためには、会社のホームページをしっかり見たり、実際に経理担当者と話す機会を作ったりすることで、少しでも雰囲気を掴むことが大切でしょう。
迅速かつ柔軟な対応ができない
自社の経理課であれば、急ぎの仕事や追加業務など、イレギュラーな業務でも頼みやすいでしょう。しかし、経理のアウトソーシングを行っていると、迅速かつ柔軟な対応をしてくれるとは限りません。
そもそも、アウトソーシング先の経理担当者が常駐しているとは限らないので、仕事をお願いしたくてもできない可能性もあります。
さらに、契約外の業務は受けつけられないということもあるでしょう。経理業務の迅速性・柔軟性という観点においては、自社の経理に軍配が上がります。
業務をマニュアル化する手間がかかる
会社ごとに経理業務の方法は差があるため、経理アウトソーシングをする際、委託する業務をマニュアル化する必要があります。
マニュアルを作ることで、委託先は業務内容や方法、社内ルールなどをしっかり把握でき、正しく正確に業務を遂行することが可能です。
ただ、一からマニュアルを作ることに手間を感じる人も少なくないでしょう。経理業務が属人化してしまっている場合はなおさらです。
しかし、一度しっかりマニュアル化してしまえば、何度も教えたり変更したりということもなくなるため、長い目で見れば楽といえるのではないでしょうか。
経理アウトソーシング(外注)のメリットとデメリット比較
経理アウトソーシングには、デメリットはあるもののメリットも数多くあるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
経理アウトソーシングを行うと、経理のプロによるITを駆使したスピーディーで正確な経理業務が期待できます。経理業務を委託することで、人材不足の解消や人件費の削減につながり、浮いた人材とコストは売上に関わるコア業務に集中できるため、会社が成長・発展する可能性が高まるでしょう。
第三者の目を入れることで、不正防止にも一役買い、経理担当者がいなくなるリスクや経理担当者の属人化にも対応できます。
一方、経理アウトソーシングを行うことで、社員を育成する機会が持てなかったり、マニュアル化に手間がかかったりなどのデメリットもあります。情報を外部に送るため、セキュリティ面はより一層の注意が必要になり、委託する業務内容や業務量によっては自社で経理部を持つより割高になるケースも否めません。
委託会社によっては経理担当が常駐しておらず、イレギュラーな業務を受けてもらえないということもあるかもしれません。
経理アウトソーシングを成功させるためには、自社に合った委託先を探すことがポイントです。複数の経理代行業者を調べ、比較することで満足のいく会社を選び抜きましょう。